翌日の放課後。
美術室で油絵の続きを描いていた私は、いまいち集中することができずにいた。昨日の出来事を引きずっていたからだ。
「……あ」
気付けばパレットの上に、濁ったグレーみたいな色を作っていた。私はすぐ、色に心を反映させてしまうらしい。
「水島ちゃん。秋の美展に向けて、なにか描いてみない?」
ふいにかけられた声に顔を向けると、まり先輩だった。
「目標作ったほうが、もっと伸びるよ。今、水島ちゃんすっごくいい感じだから、素敵な作品できそう」
「あー、それ、思った俺も。キミはきっと伸びる」
まり先輩のうしろからヌッと顔を出してきたのは平山部長。すかさずまり先輩が、
「部長が言うと胡散臭い勧誘っぽく聞こえるからやめてくださいよ」
と笑った。
「あ、そうだ。持ってきました、正式な入部届け」
「おおっ! ついに!」
出しそびれていた入部届けを部長に渡すと、彼はその場でターンした。