急に言われた言葉に、私は最初なにの話をしているのかわからなかった。

「たぶんそのまま夏休みに突入するし、推薦入試の判断材料として提出しないといけないから、もしかしたらそのまま戻ってこないかも、作品」
「…………」
「見せるって言ったのに、ごめんね」
「……あ……」
 
ショックな言葉をたたみかけられて、私はなにも言えなくなった。
青がとてもきれいで、見ていたら自分もその色に吸いこまれてしまいそうなあの作品。体を丸めて膝を抱いた私が、その一部になるはずの作品。それが……見られない?

「や……、いえ、そんな……ぜんぜん……」

心とは裏腹な返事を返しながら、突然先輩が私に対して距離を置いたように感じられて、目の前が暗くなった気がした。

まるで部外者だと、そんな義理はないのだと言われているみたいだ。私が部活に出られるようになったからって、彼にはどうでもいいこと。それどころか、同じタイミングで先輩は美術室に来なくなる。3年生は1学期で部活を引退するから、夏休みが明けても……ほぼ会えない。

いつの間にか先輩はすでに立ち去っていて、うつむく私の視界には自分の靴と諏訪くんの靴だけが映っていた。

「ほらみろ。また泣きそうな顔になって」

諏訪くんの言葉が降ってきて、私はキュッと下唇を噛む。

「俺は水島のそんな顔、見たくないんだけど」
 
そしてまた、彼は私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。