次の日の放課後。トイレから美術室へ続く渡り廊下を歩きながら、今日は最後まで部活をしようと意気込む。

火曜日だから……先輩来るかな?

先週、背中を押してくれた桐谷先輩に、ちゃんとお礼と報告がしたいと思っていた。それに……やっぱり純粋に会いたいし、絵に没頭している姿も見たかった。

「あれ?」

ふと、グラウンドと体育館を仕切る並木のところを見ると、見覚えのあるかがんだうしろ姿が目に入った。

「……先輩だ」

前なら、なにしてるんだろう、と思うところだけど、今ならもうわかる。彼は、絵に使えそうな枝や葉っぱを探しているんだ。
 
私は階段を駆けおりて、先輩のもとへと急いだ。7月に入って梅雨もあがり、緑が一層濃くなっている木々の間を通り、
「桐谷先輩」
と声をかける。

「……ビックリした。水島さんか」

そう言うものの、『ビックリ』顔にはぜんぜん見えない普段の表情で振り向いた桐谷先輩。あいかわらずけだるそうに、拾った葉っぱを指でクルンと回した。