「ほうほう、ほれで?」
「涼子、ポッキー5本同時に口に入れないでよ」

月曜日。昼休み時間に先週の金曜日の話をすると、涼子がシリアスな顔をしながらも5本のポッキーを咥えて動かす。話しているこっちの気が抜けてしまう。

「とりあえず、週の半分は塾で、もう半分は美術部に行ってもいいってことになった。ただし」
「ただし?」
「学校と塾のテストで成績がさがったら、即、親子会議を開いて、塾と部活の比率について話し合うこと、だって」

それを聞いた涼子は、ヘラッと笑って、モグモグとポッキーを一気に頬張る。

「すごい。沙希のお母さんにしては大譲歩じゃないの?」
「うん」

少し照れくさい感じで笑った私も、ポッキーを一本口に含み、前歯でポキンと小気味よく噛んだ。

私は、もっとたくさん話をすべきだった。最初から諦めずに自分からいろいろ聞くべきだった。ぶつかる勇気とか、傷つく覚悟とか、そういうのが足りていなかったんだと、今ならわかる気がする。

「それにしても、よく言えたね。なにかきっかけがあったの?」
「きっかけ……」