『お父さんが急に戻ってくることになったから、駅に迎えにいってくる。ご飯は食べてて』

メールに気付いたのは、帰り着く間際だった。マナーモードのままだったから、バスの振動で気付かなかった。私は、だからバタバタしていて留守電だったのか、と思いながら、家の扉を開ける。

単身赴任のお父さんが戻ってくるのは、お正月ぶりだ。あまり多く喋らない人なので、帰ってきてもお母さんがひとりで喋っている印象。

「…………」

お母さんとちゃんと話すって決意した途端こうやってイレギュラーなことが起こるなんて、タイミングが悪いな。

私は鼻でため息をついて、キッチンに入り、鍋のふたを開けた。まだ少し温かそうなシチューが、ほのかに湯気をあげた。