私はふいっと顔を背けて、何事もなかったかのように装い、もう片方もスニーカーに履き替える。昨日、女の人の肩から顔を覗かせてこちらを見た彼の視線を思い出し、なんだか胸がザワザワした。
キュッとスリッパの音。もう一度彼がいたところを見ると、彼は歩きだして視界から消えたところだった。校舎の中に入っていくところを見ると、今まで外にいたということなんだろう。
なんとなく不思議な人だな、と思ってそのままそちらを見ていると、ヒラリとなにかが舞って落ちるのが目に入る。
「あ」
再度声に出してしまい、棚の間を抜けてとっさにそれを拾う。落とし物だと思ったそれは、黄緑色が鮮やかな葉っぱだった。
「…………」
べつに慌てて拾わなくてもよかったな、なんて思いながらかがんだ体を起こし、ふっと顔をあげると、また私が言ってしまった「あ」に反応したらしい彼が、数メートル先で立ち止まってこちらを見ていた。
3秒ほど、見つめあいながらの沈黙。肩上の長さの黒髪が、昇降口から入る風でさらりと左に揺れる。
キュッとスリッパの音。もう一度彼がいたところを見ると、彼は歩きだして視界から消えたところだった。校舎の中に入っていくところを見ると、今まで外にいたということなんだろう。
なんとなく不思議な人だな、と思ってそのままそちらを見ていると、ヒラリとなにかが舞って落ちるのが目に入る。
「あ」
再度声に出してしまい、棚の間を抜けてとっさにそれを拾う。落とし物だと思ったそれは、黄緑色が鮮やかな葉っぱだった。
「…………」
べつに慌てて拾わなくてもよかったな、なんて思いながらかがんだ体を起こし、ふっと顔をあげると、また私が言ってしまった「あ」に反応したらしい彼が、数メートル先で立ち止まってこちらを見ていた。
3秒ほど、見つめあいながらの沈黙。肩上の長さの黒髪が、昇降口から入る風でさらりと左に揺れる。