「…………」

……舞川さんとは、一緒じゃなかったんだ……。彼女はみんなとともに買い物に行ったんだろうか。

聞きたいけど聞けない私は、きれいな黄緑の葉の柄を持って、先輩がするみたいにクルンと回してみる。

「なんで美術室来たの? 今日」

今度は私に投げかけられた質問。先輩は葉っぱを机の上にパラパラ落として広げながら聞いてきた。

私は、葉っぱから先輩へと目を移し、
「絵が……描きたくなって」
と言った。
……嘘だけど。
結果的にそうなっただけで、本当に気にしていたことは別だった。

「ふーん」

とぎれる会話。また、風がパタパタと暗幕を揺らす音。そしてその影が、床でゆっくり踊った。

「……ついでに、スケッチ……しますか? この前の続きの」

無理やりな話題転換だってわかっていた。先輩もそう思ったのか、一瞬目を点にしたあとで、思いきり吹き出す。

時計を見たら、バスの時間は過ぎていた。私はとっくに気付いていた。もしかしたら、最初から過ぎてしまえばいいと思っていたのかもしれなかった。

「それじゃあ……」

先輩は再度伸びをして、視線を私へと移す。

「とりあえず、お母さんと塾の先生に電話してきたら?」