「沙希、また眉間にしわが寄ってる」
「…………」

休み時間、私の顔を覗きこんで人さし指で私の眉間を押す涼子。

「くせになるからやめたほうがい……」
「やめてよ!」

冗談でグリグリしてきた涼子の手を、私はパッと振り払った。今までにないことに、涼子はきょとんとしている。

「どうした? 沙希。悩みがあるなら……」
「あっても言わないわよ。涼子みたいに悩んだことなさそうな人には」
「…………」

……………………あ。

「ごめ……」

とっさに謝るも、涼子の眉はさがったままだった。

私、なに言ってるんだろ……。

「違う。ホントにごめん。そんなこと思ってなくて」
「ハハ、わかってるよ。私のほうこそ、しつこくしてごめんよ」

涼子はわざとおどけた表情を作って空気を戻そうとする。悪いのはこっちなのに。

「…………」

最低……。
 
うつむくと、今日の塾での追試となる、前回の英語の模試の答案用紙。赤ペンの大きなピンが目に入って、私は泣きたくなった。