「さっきナカと一緒にここ通ったんだけど、ナカも今のお前と同じ顔してたぞ」
「……うん」
「フラれてんのに、これ以上なに落ちこむわけ?」
「落ちこんでないもん」

嘘ばっかりだ。やっぱり特別扱いされるのは自分だけであってほしい。そういう気持ちがあるから、こうして性懲りもなくショックを受けるんだ。

「なんかあのふたり、お似合いだな」
「……そうだね」
「もう付き合っちゃってるんじゃね?」
「…………」
「ほら、あからさまに落ちこんでるじゃねーか」
「うるさいよ。わざと言わないでよ」

横で茶々を入れてくる諏訪くんに、私はキッとにらみを入れる。

「で、用事はなんだったの? 急いでたんだろ。反対から回って別の階段使って行くか?」
「いい。もう用事なくなった。またでいい」
「なんだそれ」

諏訪くんがそう返した直後、
「堂々とコソコソしてるね、キミら」
と、階段側の角からひょいっと桐谷先輩が顔を出してきた。うしろには舞川さんの姿も。

「わっ! ビビった!」

大げさに驚いた諏訪くんほどじゃないけれど、私も突然のことに息が止まりそうになる。