次の日。

「おう、水島。どこ行くの?」

昼休みにお弁当を食べ終えて廊下を急ぐ私に、ちょうど通りかかった諏訪くんが声をかけてきた。

「ちょっと」
「トイレ?」
「ううん」

昨日のことを桐谷先輩に謝りたい私は、3年生の階へと行くべく階段に向かっていた。諏訪くんに言ったらなんとなく止められそうな気がした私は、笑ってごまかして諏訪くんの横を通り過ぎる。

「あー……っと、水島。待って」
「ごめん、ちょっと急いでて」

私のうしろをついてきて呼び止める諏訪くんを横顔で振り返りながら、それでも歩みを止めずにごめんポーズで振り切ろうとする私。

「待てって」
「なに?」

珍しくしつこい諏訪くんに肩をつかまれて、私はちょっと怪訝な態度でようやく立ち止まる。まわりには廊下で喋っている生徒がちらほら。ちょっと離れたところで、男子たちがじゃれあいながら爆笑している声が響いた。

「や、うーん……、そっち行くの、もう少ししてからにすれば?」
「なにそれ。私は階段使うの。急いでるんだってば」
「だから、……って、おい」