「がっかりしたわ、本当に。また部活? それとも悪いお友達でもできたの?」
「……っ」

下唇を噛んで言い訳しようとするも、
「なんでお母さんの言うことがわからないの? なんで約束が守れないの? いつからそんな悪い子になったの? 今までずっといい子だったのに」
とたたみかけられ、言葉を飲みこむ。

涙がにじみそうになり、目に力を入れる。お母さんに黙って塾を休んだのも、バレないようにひとつ前のバス停で降りていたのも、もうしないって約束を破ったのも、悪いのは全部私だってわかっているけれど、説明のつかないような悔しさが胸のなかを占領して爆発しそうだ。

「中学受験に失敗したのも、気のゆるみのせいだったでしょ? また二の舞になるわよ? そんなんじゃ、お父さんに示しが……」
「俺が頼みました」

背後から声が聞こえた。

「…………」

え? ……なん……で?

その声に振り返ったことで初めて、うしろに桐谷先輩がいたんだってことに気付いた私は、声が出ないくらい驚き、目を見開かせる。