舞川さんだった。その驚いた顔はそれから桐谷先輩に移り、なんで桐谷先輩が沙希ちゃんをモデルにスケッチしてるの? って、言葉を発さなくてもわかるような表情になった。

「…………久しぶりだね」

それでも、空気を読んでなのかそれだけ言って、自分のいつもの席にカバンをかける舞川さん。

「……うん。久しぶり」

私は愛想笑いをしてそう返すしかなくて、若干崩れかけた姿勢を正す。そしてまた、桐谷先輩がスケッチを再開したのを合図に、私たちと彼らとの空間が遮断された。

「…………」

『桐谷先輩とは、ちょっと距離を置いたほうがいいんじゃないかな』

あの言葉が、私の集中の邪魔をする。そして、先日見た、舞川さんが桐谷先輩に抱きついていたシーンも思い出した。

胸に染み広がる苦さが、また私の息を苦しくさせていた。