視線を私とスケッチブックで何度も往復する先輩。

は……はずかしい。目だけこっち、って、見つめあうことになってしまうから、油断すると赤面してしまいそうになる。でも、先輩は真剣に描いているし、引き受けた以上はちゃんとやらなきゃいけない。

……引き受けた?

「…………」

あんな決定事項みたいな言い逃げされたら、来ざるをえないじゃないか。それに、彼の絵のいちファンとして、彼の新境地へのチャレンジに協力要請されたら、断りようがない。
だって……見たいんだ、純粋に。そのできあがった絵がどんなふうになるのか。

ここへのこのことやってきたことに対する言い訳を頭の中で列挙していると、一旦目を伏せた桐谷先輩が視線をあげて、またばっちりと目があった。

「…………」

色を塗るときの子どもみたいな表情とは打って変わって、真顔の貫くような視線で私の姿かたちを捉える先輩。

ぞくりと、今までとは違う、足もとをすくわれているような気持ちになる。ヘビににらまれたカエルみたいに、ポーズを取っていること抜きにしても、心までもが身動き取れない。裸にされているわけじゃないのにすべてを見られているみたいで、動悸が……。