しばらくすると、またいつものように乗客が降りていき、バス停を3つ残すだけになると閑散とした車内になった。時間を置いたことでイライラしているのがバカらしくなった私は、ぼそりと口を開く。
「先輩の絵……。今日、見ました」
「うん」
先輩を見ると、絵の話になって嬉しいのか、ふわりと微笑みながらこちらを向いた。
「感想は?」
そう聞かれて、私は小さく息を吐き、昼に見たあの絵を思い浮かべる。
「溶けあってるんだけど、すべての違う青がキャンバスに並べられてるっていうか……海と空がグラデーションでつながっているみたいで、なんか……すごく感動しました。デコボコした感じも色が生きてるって気がするし、あのオレンジ色もすごい存在感で、でも違和感なんてなくて」
「……好き? ああいうの」
「すごく好きです。すごくきれいだし……いいと思いました」
「……ふーん」
私の目をしっかり見ながら聞いていた桐谷先輩は、シートに背を持たせかけた姿勢をそのままに、どーも、と付け加えた。