「そういえば、水島さんも彼氏候補がいるんだったね」

思い出し笑いをしながら言ってくる先輩。

「あれ、告白も同然だよね。もしかして告られた直後だったとか? 学食では違う男の子とデートの約束してたのに、なかなかモテるんだね、水島さん」
「先輩には関係ありません」

私はイライラをまんま口調に出して答える。

「付き合うの?」
「だから」

関係ないって言ってるじゃないですか、と言おうとした口をつぐむ。なぜなら、諏訪くんの彼氏案を思い出したから。

「……そうかもしれません」
「……ふーん」

ふたりの間だけの沈黙を、他の乗客の生徒たちの声が埋める。バスの振動が私たちを同じように揺らす中、たまに当たってしまう肩と肩。いちいち意識せずにはいられない自分も嫌で、私は思いきり顔を窓のほうへと向けた。