「それにしても、タイミングよく覗く人だよね、水島さんて」
話しかけてきた桐谷先輩に、私はムッとして、
「見たくて見たんじゃないです。ていうか、校内であんなことしてるほうがおかしいんじゃないですか?」
と嫌味を返す。
あんなことねぇ、と飄々と言いながら、イヤホンを片耳につけようとする桐谷先輩。
言いようのないドロドロした気持ちがまた、私の胸の内を埋め尽くしていく。
「付き合うんですか?」
「まさか」
桐谷先輩がもう片方の耳につけようとしたイヤホン。気付けば私は、それを無理やり取っていた。
「舞川さんに失礼です。そんな、傷つけるようなことしないでください。彼女は本気で先輩のこと」
「みたいだね。じゃあ、付き合ったほうがいいと思う?」
「…………」
“まさか”と言った口が、すぐ“付き合ったほうがいいと思う?”と言う。意味がわからない。この人は、本当になにを考えているんだろう。ていうか、私も私だ。舞川さんを傷つけるなと言っておいて、ちゃんと受け止められるとひるんでしまって。
話しかけてきた桐谷先輩に、私はムッとして、
「見たくて見たんじゃないです。ていうか、校内であんなことしてるほうがおかしいんじゃないですか?」
と嫌味を返す。
あんなことねぇ、と飄々と言いながら、イヤホンを片耳につけようとする桐谷先輩。
言いようのないドロドロした気持ちがまた、私の胸の内を埋め尽くしていく。
「付き合うんですか?」
「まさか」
桐谷先輩がもう片方の耳につけようとしたイヤホン。気付けば私は、それを無理やり取っていた。
「舞川さんに失礼です。そんな、傷つけるようなことしないでください。彼女は本気で先輩のこと」
「みたいだね。じゃあ、付き合ったほうがいいと思う?」
「…………」
“まさか”と言った口が、すぐ“付き合ったほうがいいと思う?”と言う。意味がわからない。この人は、本当になにを考えているんだろう。ていうか、私も私だ。舞川さんを傷つけるなと言っておいて、ちゃんと受け止められるとひるんでしまって。