放課後。

今日も雨がシトシトと降っている中、私は重い足取りでバス停へと向かう。バス停に着くと、屋根の下にいつもより多い人数の生徒たちが待っていて、いろんな色の傘が、コンクリートに同じ色のしずくのシミをつけていた。

いつもよりもはやく来たバスに乗りこみ、私はうしろから2番目のいつもの席に座る。時間調整のために停車したままのバスの中、湿気のせいか窓が曇っているのをぼんやりと見つめる。

「隣、いい?」

ぼーっとしていたからふいにかけられた声に驚き、顔を見る前に「はい」と言って見あげる。

「…………」
「うしろの席、埋まってるから」

そう言って、開いた口がふさがらない私の隣に座ったのは、桐谷先輩だった。

「な……んで」
「だから、席埋まってるし、ひとりで座ってる人で知ってるの、水島さんだけだから」
「や……、時間。この時間にバスに乗らないじゃないですか、いつも」
「だからって乗っちゃいけない? 今日は用事があるんだけど」
「……すみません。そうですか」