「水島ちゃんて、中学のときも美術部だったの?」

部長に、とりあえず石膏デッサンでも、と言われ、2年の先輩から書き方を教わる。私よりも少し小さく、見るからに人がよさそうなその女の先輩は、“まりちゃん”と部長に呼ばれていた。

「いえ」
「じゃあ、何部?」
「帰宅部です。塾があったので……」

そうなんだ、と笑って返すまり先輩。

「でも、なんか上手だね。初心者っぽくない」
「そうですか?」

ハハ、と笑顔を返したけれど、たぶん美術部につなぎ止めたくて言ってるのだろうな、と心のなかで思った。だって、ぜんぜんうまく描けていない。難しすぎる。

まわりを見ると、みんな各々で好きなことをやっているという感じだった。私のイメージでは、全員黙々とデッサンか油絵を描いているイメージだったけれど、ノートにマンガのような絵を描いていたり、ふたりで笑いながらひとつのデザイン画の色を塗っていたりと、思っていたよりアバウトでわきあいあいとしている。

「この美術部はさ、基本、自由なんだ。今日みたいに、油絵描いてる人もいれば、デザインとかイラストやってる人もいるし。写真撮ったり漫画描いたりしてる人もいるよ。みんな仲がいいから、たまに課外活動と称して外に出ることもあるし。まぁ、美展に出すときには本腰入れるけど、その日その日でそれぞれ好き勝手やってる。水島ちゃんもやりたいことあったら言ってね」
「あ……、はい」