「…………」

ほんの少し黙っていた諏訪くんが、咳払いをして腕組みをし、壁に寄りかかった。

「俺さ、一ヶ月くらい部活休んでみて、それからまた考えれば? って言ったけど、やっぱあれ撤回するわ。たぶん、あの手の人にはもうしばらくかかわらないほうがいいと思う。ループだから」
「…………う……ん」

“ループ”か……。たしかに。

「あと、さっき気付いたんだけど、もしかしたら俺……」
「あれ、まだいた」

角を曲がってきた人の声に、私も諏訪くんもビックリして肩があがる。桐谷先輩が、さっきと同じ表情で立ち止まる。よく考えたら3年生は上の階だから、ここを通るのは予想できることだった。

「じゃーね。続きをどうぞ」

なにも言えないでいる私と諏訪くんの横を通り、階段を上り始める桐谷先輩。タン、タン……と、上履きの音までもが、けだるそうに響く。

「あ、水島さん」

半分上りきって踊り場のところまで来た先輩は、ポケットに手をつっこんだまま顔をひょこっと出し、私を見おろす。