「そういえば水島ってさ、あれから部活行ってないの?」
「え? ……あぁ」

諏訪くんに動物園で相談したことを思い出し、「うん、まぁ」と正直に答える。

「で、どんな感じなの?」

腕組みしながら窓に寄りかかっている諏訪くんが、顔を傾けて聞いてくる。

「どんなって?」
「薄れていってんの? 気持ち」
「…………」

「水島さん」

諏訪くんの方を見て、なんて返答するべきか言葉に詰まっていた私は、その反対側からふいに呼ばれた声に、息が止まらんばかりに驚く。

諏訪くんから180度振り返って目に飛びこんできたのは、桐谷先輩。はけてきたものの1年生ばかりの廊下で、やはりその落ち着きと端正な顔立ちは目立った。

「……お、お久しぶりです」
「久しぶり」

バスで告白してフラれ、翌日学食で隣のテーブルになって以来の桐谷先輩。

なんか、すっごく普通だ。いつもの、なにを考えているのかわからない顔で、だるっとした態度。声をかけてきたのは先輩のほうなのに、私のほうがなにか喋らないといけないような空気になる。