「こ、是枝くんは?」
「電話かかってきて、あっちで話してる」

諏訪くんが木のテーブルにジュースを置きながら顎で示す方向を見ると、少し離れたところの木の陰で携帯を耳にあてている是枝くんが見えた。

「私もちょっとトイレ行きたくなっちゃったから、行ってきてもいいかな?」

急に立ちあがった舞川さん。

「え? あっ、いいよいいよ。行ってらっしゃい」

私はなんだかアタフタしながらうなずき、舞川さんをトイレへと送り出して手を振った。彼女のうしろ姿を見送った私は、なんだかとても微妙な気持ちで顔を戻す。

「……女って、こわ」
「聞いてたの?」
「聞こえてきた」

私の横に座って、ベンチに背を預ける諏訪くん。

「……舞川さんいい子だよ」
「いい子ほど腹の中になにか隠してるだろ」

諏訪くんはそう言ってコーラの缶を開け、炭酸なのにゴクゴク飲み始めた。「好きなの飲めば?」と言われたので、私はカルピスウォーターをもらって、ひと口飲む。

この人、裏表なさそうだな、と思った。加えて、意外と話しやすそうな雰囲気に、この人になら相談できるかも、と勝手に親近感を持ちだす。