「そっか……」と言った舞川さんは、しばし押し黙る。私は、なりゆきとはいえ先輩に先に告白してしまったことに、小さな罪悪感を覚えた。

「…………」

でも、こんなになにもかも持っている子が、そういうのを気にするんだ。心配するようなことなんてないのに。だって、告白したところで、結局先輩は、私なんて眼中になくて……。
 
心のなかでつぶやきながら、胸が痛くなる。自分で自分の首を絞めて、なんかバカみたいだ。

「桐谷先輩とは、ちょっと距離を置いたほうがいいんじゃないかな」
 
舞川さんの太ももに置かれた手が、ワンピースの上でギュッとなった。私は、ちょっと驚いて、「えっ?」と聞き返す。

「えっと……なんていうか……」

言葉を探そうとしている舞川さん。察した私は無理に笑顔を作って、
「そ、そうだよね。迷惑だろうし、ホント……」
と返した。

そのとき。

「ただいま」
「わっ!」

ビックリして、私も舞川さんも、ほんの少しお尻が浮いた。戻ってきた諏訪くんが、両手で缶ジュースをかかえながらうしろに立っていたから。