途中、屋根つきのベンチがあったので、そこで休憩することになり、涼子と中野くんはそれぞれトイレに、諏訪くんと是枝くんはみんなの飲み物を買いにいってくれた。
ふたり残された私と舞川さんは、ベンチに座ってゾウを見ながら、今日やっとまともな会話をする。
「舞川さん、今日ごめんね……なんか」
「ぜんぜん大丈夫だよ。楽しいよ」
舞川さんは優しく笑ってそう言う。
いい子だな、舞川さん。ほんと可愛くて、優しくて、男子からも女子からも好かれてて、絵も上手で……。
いつものようにそう思いながら、ゾウが飼育員さんからリンゴを鼻でもらったのを皮切りに、思いきって口を開く。
「桐谷先輩の絵のことだけどさ……」
「……あぁ、うん。ショックだよね。あとから聞いたんだけど」
舞川さんの表情が、私と同じように曇った。
そうだった。あの日、舞川さんは来ていなかった。私と桐谷先輩が外に出てから来たのかもしれないけれど。