「新入生だよね? 仮入部?」
背後からの声に思わず肩をあげる。美術室の中を覗きこみ、何人かいるのを確認した途端、急に声をかけられたから。
「いえ、あの……」
振り返ると、とても人のよさそうな3年生の男子がニコニコと微笑んでいた。
「よかった。実はまだひとりも来てくれてなくてさ、1年生。正直さみしかったんだよね。あ、僕、部長の平山(ひらやま)です」
よろしく、と付け加えて、肩に手を添えながら、ずいずいと美術室の中へ私を押していく部長さん。
ん? え? あれ?
「1年生第1号、やっと来たよー。えっと、名前は……」
声を張る彼と、瞬時にこちらを注目した部員さんたちを交互に2度見して、え? え? と慌てる。
ヤバい。誤解されている。
そう確信するも、嬉しそうな部長さんと歓迎ムード満載の部員さんたちを見て、「違います」とは非常に言いづらい状況を悟る。