「おい、ミウ!お前も今帰りか?」



学校を出て、駅までの道程を歩いていたところで突然背後から声を掛けられた。

足を止めて振り向けば、視線の先には朝会った時と同じ姿のカズくんが立っている。

合格祈願のお守りのぶら下がったリュックを背負い、まるで全校生徒のお手本のように、きっちりと着こなされた制服。

オシャレさの欠片もないはずなのに、それがカズくんだと様になるから不思議だ。



「カズくんも、今から帰り?」



足を止めたまま、朝のようにカズくんを待っていれば、カズくんが駆け足で私の隣に並ぶ。

見上げれば、「おう」とだけ短い返事が落ちてきて、小さく笑った。

……『また今度』が、訪れたことが嬉しい。

こんなこと、今までの私なら絶対に思わなかった。



「たまには、一緒に帰るか」



カズくんの言葉を合図に再び前を向いた私たちは、並んで駅に向かって歩き出す。

その拍子に、足元を囲んでいた落ち葉が舞って、秋の音を奏でた。