思わず、弾かれたように雨先輩を見た。

すると視線の先の雨先輩は、やっぱり困ったように笑うと、私と入れ違いに前を向く。



「自分の未来だけは、見たくても見れない。だから一度も、自分の未来を見たことはない」



キッパリと言い切った雨先輩を前に、今度は私が目を見開く番だった。

私は、とんでもない勘違いをしていたらしい。

てっきり、雨先輩は自分の未来も見たい時に見ているのだろうと思っていたけど、そうじゃなかった。

冷たい鉄の手摺りに腕を乗せ、その上に顎を乗せた雨先輩の視線の先には、いつだって他人の未来ばかりが映っていたんだ。

それは、どれだけ、もどかしいことだろう。

見たいものは見えないのに、見たくないものは見えてしまう。

輝かしい未来も、悲しい未来も、見えたところで雨先輩には全て関係のない未来。

ただ心に残るのは、人の未来を覗き見てしまったという罪悪感と焦燥感だけなんて。