「勝手に自分の未来を覗かれるなんて、相手からすれば気持ち悪くて仕方がないことだと思う」



冷たい風が雨先輩の髪を揺らして、彼の目元に影を作った。

意識が、過去へと攫われる。

それはまるで、つい先日、雨先輩に未来を覗き見られた私の声で、心が言いようのない罪悪感に包まれた。



「だから、正直、人と関わるのは苦手なんだ。自分の異質さばかりを痛感するから」



そう言うと、寂しげに微笑んだ雨先輩は再び空へと視線を移した。

同時に、手摺りに乗せられている手に、強く力が篭められたのがわかる。

……雨先輩は、だから、毎日屋上にいるのだろうか。

たった一人、屋上で空を見上げているのだろうか。

グラウンドで汗を流す生徒や、楽しそうに昼休みを過ごす生徒たち。

その裏で、未来が見える自分を異質だと卑しめながら、たった一人、この場所で。