「……また勝手に、人の未来を覗き見たんですか」



八つ当たり半分、呆れ半分でジロリと雨先輩を睨み見れば、雨先輩は一瞬困ったように苦笑いを零した。

今日もグラウンドでは、サッカーや野球を楽しむ生徒たちの声がする。

それに混じって吹奏楽部が昼練で楽器を奏でている音もして、賑やかな学校の空気の中で屋上だけ、どこか別の世界に切り離されているようだった。



「……それは、いつも見えるわけじゃないんだ」

「え?」

「ただ、未来のことを強く考えている相手の目を見てしまった時だけは、俺の意志とは関係なく、相手の未来が見えてしまうことがあって」

「え……」

「まぁ、結局、美雨の言う通り、覗き見てるってことには変わりないから、言い訳にもならないかもしれないけど……」



雨粒が零れ落ちるような頼りのない声で、雨先輩が言う。

グラウンドを眺めていた目を慌てて隣へ移せば、雨先輩は私を見て今度は切なげに微笑んだ。