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「……朝、私のこと無視しましたよね」



昼休み、屋上で空を眺めていた背中に声を掛ければ、ゆっくりと振り向いた彼は不思議そうに首を傾げた。

小さく溜め息を吐き出すと、靴音を響かせながら彼の隣に並ぶ。

そのままチラリと視線を横に滑らせれば、相変わらず不思議そうに私を見る雨先輩と目が合った。



「無視なんてしてない。おはよう、って、挨拶したよ」

「それ、カズくんにだけ、ですよね?」

「カズくん……?ああ、朝、美雨と一緒にいた同じクラスの……。違うよ。俺は、美雨にだけ言ったつもりだった」



ふわり、と。雨先輩が柔らかに笑う。

今日も一人で空を眺めている雨先輩に声を掛けるキッカケが見つからなくて、ただ思いついた言葉を投げただけだったのに。

まさか、そんな返事が返ってくるとは思わなくて思わず言葉を失って彼を見れば、今度は雨先輩が小さく溜め息を吐き出した。



「……美雨の方こそ俺を無視したから、俺と関わってること知られたくないのかと思った」



「だから挨拶も、美雨にだけ聞こえるように言ったんだけど」なんて。続けられた言葉に心臓が虐められて、今度こそ私は逃げるように空を見上げた。