「……どうせ私は、昔から可愛くないですよ」
つい唇を尖らせながら呟けば、カズくんは今度こそ堪えかねたように噴き出した。
「別に可愛くないとは言ってないだろ、可愛げない奴だって言ったんだよ俺は」
「似たようなもんでしょ」
「まぁ、似たようなもんだけど、似てないような気もしないでもない」
完全にからかい口調になったカズくんを前に、先ほどのお返しの意味も込めてカズくんの横腹を肘で小突く。
その拍子に、カズくんの背負ったリュックにぶら下がっている『合格祈願』と書かれたお守りが、視界の端で小さく揺れた。
ああ、そうだ。高校三年生であるカズくんは受験生で、きっと今は勉強で忙しい時期だろう。
前に大学の話を聞いた時には、頭の痛くなるような某有名大学を受験すると言っていたから尚更だ。