「 " ごめん、俺、大切な彼女がいるから " ─── そう言って、彼にフラれたあと。彼女は、彼に満面の笑みを浮かべて言うんだ」
真っ黒な、その瞳に映るのは、私と黄金色に染まった世界だけ。
思わずその美しさに目を奪われると、まるで時間が止まったような錯覚に陥った。
「 " ありがとう、私は、彼女を一途に想うあなたが好きでした " 」
ハラハラと落ちる葉は、止まることなく時間だけを刻んでいく。
あとどれくらい、どのくらい、私はこの綺麗な世界にいられるだろう。
この世界を見ていられるだろう。
「彼女は、笑顔で美雨のところに戻ってくるよ」
優しい、優しい声。
このまま時間が止まってくれたらいいのに、なんて。
そんなことを思ったのは、きっと、この瞬間(とき)が初めてだった。