ユリの真意が見えなくて、思わず眉根を寄せて首を傾げた。
確かあの時ユリは、" 死ぬ前に、やりたいこと全部やっちゃいたい " と、言っていた。そうしないと、悔いが残りそうだから、と。
だけど、そこからどうして、その中でも一番やりたくないことの話しになるんだろう。
優先順位が低いものなら、死ぬ前に、わざわざする必要もないことだと思ってしまう。
「……私ってさ、昔から、自分が辛くなることには、なるべく向き合わないようにしてたの」
「え……」
「だって、怖いから。自分が傷付くのは、すごく怖い。怖いし、嫌だし、辛いから……今ある現実から目を背けてきたこと、たくさんあった」
─── いつだって、ひたむきに好きな人を見つめてる。好きな人を、想ってる。
例えそれが、叶わぬ恋だとしても、真っ直ぐに。
私は、そんなユリの恋を、とても悲しいものだと思ってた。
同時に……ユリは、とても強い子だと思ってた。
「ハヤテくんのことも、そう。ハヤテくんには彼女がいるから、踏み込むと辛いだけだし、私は、ただ遠くで見てるだけでいいや……って」
「……うん」
「だけど、見てるだけなのも結局辛いから、彼を一途に想ってる自分って健気だなぁ、すごいなぁ、乙女だなぁ、とか。そうやって自分を褒めて守りながら、逃げ道ばっかり作ってたの」