「……見えた、よ」

「えっ」

「今話した、きみの恋の行方。見えた」



と。ここから先の話をどうしようかと頭を抱えていた私を置き去りに、ユリの目を真っ直ぐに見つめていた雨先輩が、唐突にそんなことを言った。

言葉の通り、いつの間にかユリの未来を見終えてしまったらしい雨先輩。

彼の言葉に目を丸くするユリと、あまりに性急過ぎる先輩に、「もっと、丁寧に話を進めてください!」と、私は思わず声を上げてしまった。



「こ、恋の行方が見えたって、あの……」

「うん。きみの予想通り、叶わない」

「え……」

「あ、雨先輩……!?」

「 " ごめん、俺、大切な彼女がいるから " ─── そう言って、きみは彼にフラれる」

「……っ」



足元に広がる影が大きく揺れて、一瞬、世界が深い海の底に沈んだように音を無くした。

風に揺れた銀杏の木から、力をなくした葉が落ちる。

予告のなかった残酷な宣告に、ユリの大きな瞳には、あっという間に涙が滲んだ。

呆然としながら雨先輩を見れば、先輩は黄金色に輝く銀杏の木を背景に、未だに真っ直ぐにユリの瞳を見つめていた。



「それが、きみの未来だよ」



─── どうして。


グッ、と握った拳に怒りが篭もった。

どうして、雨先輩は勝手に、そんなこと。

私が求めていたことはそうじゃなくて、ユリを悲しませないための選択をするために、未来を見てほしいとお願いしたのに……!