11月、ハラハラと落ちる葉、銀杏の木の下に立つ雨先輩は、まるで一枚の絵画のよう。
「ごめん、ユリ……急に、こんなところに連れてきて。でも、どうしても先に、雨先輩に会ってほしかったの……」
先輩を前にして、あからさまに固まっているユリは、私の言葉に困惑したように瞳を揺らした。
それは、そうだろう。そもそも、私と雨先輩が関わりを持っていることすらユリは知らなかったのだ。
その上、ユリは雨先輩に対して良い印象は持ってない。
" 雨先輩とは関わらない方がいい " と、私に忠告したくらいだ。
もちろん、その忠告を受けた時にはすでに関わってしまっていたから、どうしようもなかったんだけど……
「ミウ……?ねぇ、先にアメ先輩に会ってほしかったって、どうして─── 」
「あ、あのね!実は、雨先輩って占いがすごく得意なの!!」
ユリの言葉を遮って、慌てて顔に笑顔を貼り付ける。
背後に立つ雨先輩の視線を痛いほど感じるけれど、今は先輩のことまで気遣っている余裕はない。
「占い……?」
「う、うん。ちょっと前に、偶然、私も雨先輩に占ってもらう機会があって……それで、その占いが良く当たってたからユリにもどうかな、と思って……」
ほんの少し、震えた声。我ながら、強引な説明だと頭が痛くなる。
だけどもう、これ以上に誤魔化す術が見つからなくて。
そもそも、ユリに嘘を吐くのは心苦しいけれど、仕方がない。
『未来が見える』なんて、そんなの言ったところで信じてもらえるわけもないから。
もちろん、今の話だって信じてもらえるかどうかは、わからないけど……