「ねぇ、ミウ、急にどうしたの……!?」



放課後、ハヤテくんとの待ち合わせ場所に向かおうとしたユリを捕まえて、私は部室棟近くの水飲み場に向かった。

『とにかく、ついて来て欲しいの』

それだけ言うと、困惑するユリを半ば無理矢理、雨先輩との待ち合わせ場所へと連れていく。

途中、『おい、ミウ、何やってんだよ!』なんて、幼馴染みに声を掛けられたけど、それに応えている余裕もなかった。



「ミウ、私これからハヤテくんのところに─── って、アメ先輩……!?」

「……はじめまして」



部活時間前。少し離れた部室棟では、これから部活に向かおうとする生徒たちの賑々しい声がする。

銀杏の木が立ち並ぶこの場所は人気(ひとけ)がなくて、私とユリ、そして雨先輩だけが足元に広がる木々の影を踏んでいた。