「美雨……ごめん、大丈夫……?」
大丈夫なわけないでしょ、この無神経!!
とは、唇が震えているせいで、声にすることはできなかった。
─── 今日も、空は青い。今の私には、眩し過ぎるくらいに青く澄み渡っている。
そっと、鉄の柵を掴んでいた手の力を緩めて、視線を上げた。
目の前に広がる、真っ更なグラウンド。その上でサッカーや野球をやっている生徒たち、風に揺れる木々や花壇の花。
教室の匂いや、大嫌いな数学の授業、通い慣れた通学路、履き慣れたローファー。
そんな当たり前の景色が、あと一週間後には見れなくなるのかと思ったら、何故だが全てが輝いて見えた。
今目の前にある全てが特別なものに思えて、手放すのが惜しくて堪らない。
ああ……私、なんだかんだ、毎日楽しかったんだな。なんだかんだ、幸せだったんだ。
自分が死ぬということを知ってから、そのことに気が付くなんて、バカみたい。
もっと早く気付いていたら、その全てを大切にできたのに。
掛け替えのない時間を、ずっと大切に過ごすことができたかもしれない。
─── 自分の未来を、もっと大切にできたかもしれないのに。