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「それで、俺のところに来たの?」



昼休み、昨日と同じ時間に屋上へと走った私は、案の定、そこにいたその人に一通りの事情を話した。

どうして毎日屋上にいるのか─── 言葉にするより先に雨先輩の黒髪が揺れて、そこから覗いた黒目がちな瞳に捕まり声を奪われる。

同時に呆れたような溜め息を吐かれて、私はつい唇を尖らせた。



「……だって雨先輩、昨日 " 俺に何かできることがあれば、いつでも言って " って言ったじゃないですか」



制服のスカートが風でハタハタとはためいて、雨先輩へと抗議の声をあげている。



「確かに言ったけど……でも、それは美雨に関することの話で、俺は、美雨のためにできる限りのことをしたいって意味で言ったんだ」

「……っ」

「もちろん、美雨がどうしてもって言うなら協力するし、美雨のために何かしたいと本気で思ってる気持ちに嘘はない」



至極、当然のことのように言い切る雨先輩を前に、思わず顔が熱を持つ。

例えそれが、罪悪感からくる使命感で生まれた言葉だとしても。

こんなこと、言われ慣れないから胸がくすぐったくて、照れくさい。



「あ、ありがとう、ございます。そう言ってもらえると心強いで─── 」

「っていうか……そもそも、その友達の未来を見て、勝手に恋の行方を知ろうとするのは、ただのお節介なんじゃない?」

「……え?」

「お節介というか、余計なお世話というか」



けれど、続けてそんなことを言い放った雨先輩の言葉に、甘い熱は一瞬で覚めて、呆気無く色を変えた。



「人の未来を勝手に覗き見るのは、気が進まない」



あなたが、それを言いますか!? 勝手に私の未来を覗き見て、余命宣告をした、あなたが!

思わず、拳が小さく震える。

だけど、そんな私の抗議の言葉は口にしなくても、ジトッと恨めしげに自分を見た私の視線から察したらしい。

雨先輩はバツが悪そうに私から目を反らすと、今度は頭の上に浮かんだ真っ白な雲へと視線を移した。