あのあと、雨先輩は『俺に何かできることがあれば、いつでも言って』と、言っていたけれど。

逆に私の方こそ雨先輩に『何ができるんですか?』と、聞きたいくらいだ。

だって、雨先輩には私が死ぬ未来は変えられないんでしょ?

未来を変えたら、雨先輩は力を失って世界から消えちゃうんだから。

そもそも私には、未来がない。

未来がないんだから、できることも何もない。



「…………ミウ?」

「……っ!あ、ご、ごめん」



いつの間にか足元へ視線を落としてしまっていた私に、ユリの困惑に濡れた声が落ちてきた。

慌てて顔を上げれば、私を不思議そうに見ているユリと目が合って、スカートの裾をキュッと掴んでから精一杯の笑顔を貼り付ける。



「え、と……ユリが昨日言ってたことって、死ぬ前にやりたいことの話?」

「うん……、その話」



ゆっくりと頷いたユリは、一瞬視線を彷徨わせてから、恥ずかしそうに笑った。

その笑顔は、儚げなのに可愛くて。

ほんのりと染まる赤に、私までつられて赤くなりそうなほど、今のユリは恋する女の子の顔をしていた。