「……失礼しました」
頭を下げる直前に見た空は、澄み渡るような青だった。
その青とは裏腹の、酷く曇った心を連れた私は、" 榊 美雨(さかき みう) " と書かれた進路表を片手に、逃げるように職員室を後にする。
今日は朝から散々だった。
襟足についた寝癖は直らないし、そのせいでいつもの電車には乗り遅れるし、お母さんが作ってくれたお弁当もテーブルの上に忘れてきた。
こういう日は、必ずと言っていいほど嫌なことが続くものだ。
いつもより長く感じる廊下を早足で歩いて、階段を駆け足で上がると、屋上に続く扉を開けた。
「はぁ……もう、最悪」
開いた扉の向こうから、強く風が吹いた。
切れる息。ようやく吐き出した声は、やっぱり心と同じで曇っていて、重苦しくて。
私の足元に、どんよりと大きな影を作った。