* * *
「ミウ、おはよう!」
学校に着き、昇降口で上履きに履き替えていれば、後ろから肩を叩かれた。
振り返れば笑顔のユリが立っていて、今日はいつもよりも少しだけ念入りに上げられた睫毛が、クルンと可愛らしく瞬く。
笑うと片方だけできるエクボ。
高い位置で結われた髪がサラサラと風に揺れていて、今日のユリは……なんとなく、いつもよりも可愛く見えた。
「おはよう、ユリ。なんか今日、可愛いね?」
「えっ、そ、そんなことないよ!」
一足先に上履きへ履き替えてユリを待っていれば、ベージュのセーターの袖に隠れた手で口元を覆うユリ。
その仕草を見ただけで、何かあるな……と勘付いてしまうのは、女の勘というやつか、それともユリとの関係の深さのお陰か。
どちらにせよ、どこからどう見ても、やっぱり今日のユリは何かある。