「……ごめん」
それはもう、何度目の謝罪の言葉だっただろう。
怒りと悲しみ、後悔に震える私を前に眉尻を下げる雨先輩は、ゆっくりと声を紡ぐ。
「未来を、変えることはできないんだ」
「……え?」
「俺は、自分が見た未来を、自分の手で変えることはできない」
だけど、何を言い出すかと思えば。突然、そんなことを言う雨先輩を前に、今度こそ私は目を見張いて固まった。
「自分が見た未来を、自分自身の手で変えてしまうと、俺は未来を見る力を失うだけじゃなく……この世界から、消えるらしい」
らしい、というのは、どういうことなのかと。
それを問うより先に、先輩が答えをくれる。
「実際、そういう人を間近で見たことがないから、それが本当か嘘かはわからないけど……」
冷たい風が、強く、吹く。
私の身体を後ろへ倒そうと、何度も、何度も。
それでも精一杯、足の根を張って、私は真っ直ぐに雨先輩を見つめていた。
「だから俺には……未来を、変えられない」
ねぇ、ユリ、ごめん。冗談なんかじゃなかったよ。
どうやら私は…… 本当に、一週間後に死ぬらしい。