「っ、ざけんなよ!急に飛び出してきやがって!!」



その音が響いてからすぐに、そんな怒号が耳に届いた。

恐る恐る、声のした方へと目をやれば、そこには顔を真っ赤にして怒る男の人と、ガードレールに突っ込んでいるシルバーのセダン車。そして、そのすぐそばに───



「……っ、なんでっ」

「え?」

「なんで……っ、わかってたなら、助けなかったの……?」



─── 吐き気がした。

平然と、事故の起きた現場を見つめている雨先輩にも、今目の前で起きている出来事にも、ただ呆然と立ち竦んでいる自分にも。

どうして、こんなことになっているんだろう。

どうして、私はこんな思いをしてるんだろう。

……どうして、



「なんでっ、轢かれちゃうってわかってたなら、私なんかに話してないで、すぐに、助けなかったんですか!?」

「……っ、」

「猫が道路に飛び出して来ないように驚かせて逃がすとか……、何か、出来たかもしれないのに!!」



行き場のない思いは全て、目の前に立つ雨先輩へとぶつけるしかなかった。

そうでもしないと、今この場で声を上げて泣いてしまいそうで。

理不尽な非難なのかもしれない。実際、そんな時間があったかと問われれば難しかったかもしれない。

だけど、それでも、こうなる未来を知っていたのなら。

あの子のために、何かが出来たかもしれないという思いが胸を切り裂いて離れないんだ。