* * *



「なんで……?」



放課後になる頃には、風は冷たさを増していた。

その風が頬を撫でては通り過ぎる中、声を漏らした先にいる人物は、ポケットに手を入れて校門の壁に寄りかかったまま、どこか遠くの空を眺めている。

会いたくない人に、会ってしまった。

寄りにも寄って、今から帰るというタイミングで、その通り道に雨先輩が立っているなんて。

本当に、ツイてないにも程がある。

心の中で、深く溜め息を吐き出して。私は、先輩に気付かれないように、視線を下に落としながら校門を通り過ぎた。

通り過ぎた─── と、思った。



「やっと来た」



私の身体を覆う影。思わずギクリと肩を揺らして恐る恐る顔を上げれば、私を真っ直ぐに見下ろす雨先輩と目が合った。