名前を呼ばれた瞬間、心臓がドクリと脈を打った。

どうして、雨先輩が私の名前を知っているんだろう。

けれど、そう思ったのは一瞬で、すぐにその理由に辿り着いた。

手の中で、強く握られた進路表。

そこに書かれた名前が私を試すように、先程から強く、強く見上げてる。



「い、一週間後……」

「一週間後?」

「来週の月曜日の、私の未来を……」



一週間後の月曜日。

それは進路表を提出しなきゃいけない期日で、私が未来を選ばなければいけない日。


だけど言ってから、再び馬鹿げていると後悔した。

本当に、私は何をやっているんだろう。

こんな、有りもしないこと。普通に考えて有り得ないことを間に受けて、本当にどうかしてる。



「わかった」

「え?」

「一週間後のきみの未来、今から見るよ」

「な、何、言って……」

「黙って。こっち、見て─── 」



言われて、真っ直ぐに私の目を見た雨先輩の瞳に吸い寄せられた瞬間、私の中の時間が止まった。

深く、蒼い海の底を覗いたような感覚。

そういえば、昨日も、こんなことがあった。

雨先輩に、瞳の奥を見つめられ……どうにも居た堪れなくなった私は、慌てて彼から目を逸らしたんだ。