「美雨は、あの一週間のことを後悔してる? 俺に出逢わなければ良かったって、今、そう思う?」


そんなの、聞かれなくても答えは決まってる。

雨先輩と過ごした奇跡みたいな一週間は、私にとってとても大切な時間だったから。

たった、一週間。けれど、私の何かを変えるには十分で、私にとっては何ものにも代えがたい軌跡だった。

それが、とんでもない勘違いから始まった時間でも。今の私は、間違いなく雨先輩に出逢えたことに、心から感謝している。


「後悔なんて、してません。でも……未だに、夢みたいな時間だったなって思います」


そう言って、苦笑いを零せば雨先輩は楽しそうに笑った。

あの一週間を経て、明確な何かを手に入れることができたのかと尋ねられたら、今でもそれに答えることは難しい。

けれど、その中でも、こんな風に笑い合えること。

涙を零すこと、空を見上げて話をすること。

風の匂いや、感じる空気、聞こえる音。

そんな何気ない毎日が、決して当たり前ではないってこと。当たり前のことなんて、この世界には何一つないのだと。

それに気がついた今─── 私は、ほんの少しだけ、明日という未来を前よりも大切に生きられるような気がしてるんだ。