「前に、俺が話した特別な力の話、覚えてる?」
「えと、なんのことを言われているのか、サッパリ……」
「俺は、他人の未来を見ることはできるけど、自分の未来を見ることはできないって話」
ああ、その話ね……
その話は、確かに雨先輩に教えてもらったこと。
雨先輩は他人の未来を見ることはできても、自分の未来を見ることはできないって話。
聞いた時は……なんて不便な力なのだろうと思ったけど、それとこれに、一体どういう関係が……?
「大きな黒い塊が、美雨目掛けて突っ込んできたあと、突然世界が暗闇に包まれて、何も見えなくなった」
「そう、です……だから、私は死ぬだろうって……」
「うん、だからね。それは、美雨の未来じゃなかったんだ」
「私の未来じゃなかった……? 言ってる意味が、わかりません……」
「つまり、トラックが美雨に向かって突っ込んできたところまでは美雨の未来だったけど……その美雨を助けたところからは、俺の未来だったんだよ」
「え……」
「俺の未来だったから、真っ黒になって何も見えなくなった。そして多分……そこから先が見えなかったのは、今、こうして美雨の手を俺が掴んでるから」
「……それって、」
「美雨の未来と、俺の未来が重なったから、俺には美雨の未来が見えなかった」