「美雨?」

「雨先輩が無事で……本当に良かった……」

「……美雨」

「雨先輩が死ななくて……っ、ホントに良かったっ」


こんなことを言うのは、失礼だろう。

雨先輩は片目の視力を失って、これから先の未来でどんな壁にぶつかるのかもわからない。

だけど、それでも。

雨先輩が生きていてくれて良かったと、どうしても思わずにはいられないんだ。

酷い奴だと言われてもいい。最低な人間だと罵られてもいい。それでも私は、雨先輩が生きていてくれることが嬉しくて堪らない。

今、こうして、隣にいてくれることが嬉しくて堪らないんだ。


「ごめん、なさい……っ、私、本当にどうしようもない奴で……でも、わかってても、もう、生きていてくれてありがとうって、それしかなくて……」


涙で濡れた顔を隠すように両手で覆えば、頭に優しい手が触れた。

その温もりに、誘われるようにゆっくりと顔を上げると、今度は困ったように私を見る雨先輩と目が合う。