「だからって……内緒にされたら、余計に傷付きます」
呟いて、眉を下げれば雨先輩が私を見て「ごめん」と小さく声を落とした。
罪悪感なんて、あの日から、一度も消えることはない。それはきっとこの先も、消えることはないのかもしれない。
─── 雨先輩は、あの事故で右目の視力を失った。
あの日、トラックがぶつかるより先に、私の手を引いて物陰に倒れ込んでくれた雨先輩のお陰で、私たちはなんとか大事に至らずに済んだ。
けれどその時、近くにあった電柱に衝突したトラックのサイドミラーが割れて、その破片が運悪く雨先輩の右目を傷付けてしまったのだ。
事故のあと、色々な検査を経て告げられたことは右目の視力が完全に失われたということ。
あまりにも不平等で。どうして私ではなく雨先輩が、そんな目に遭うのかと泣いた私に、雨先輩は諭すように言ったんだ。
『大丈夫だよ。これでもう─── 見たくもない未来を見なくて済むんだから』