だけど、きっと、私は……これからも、過去というあの日を思い出して泣くんだろう。
もっと、あの人と話したかった。
もっと、色々なことを聞かせてほしかった。
あまりにも短くて、あまりにも長い時間だった。
まるで、奇跡みたいな時間だった。
だから私は……その奇跡を抱き締めながら、今日を生きよう。
明日という、未来を願おう。
冷たい雨の中を駆け抜けて、強く願った未来を心に抱いて。
いつでも空を見上げて、これからも私はずっと、ずっと忘れない。
この先も、決して忘れることなどないと胸に誓って。
「……行かなきゃ、」
ぽつりと零して、私は空から視線を逸らした。そのまま背後のドアノブに手を掛け、ゆっくり廻す。
けれど、私が廻すよりも早く。
突然、ドアノブが廻り、目の前の扉が光を吸い込むように開いたかと思えば───
「─── やっぱり、ここにいた」
「……っ!!」
「きっと、ここにいるだろうと思った」
ふわりと、屋上に吹いた風に揺れる黒髪。
私を真っ直ぐに見つめる─── 雨先輩の黒い瞳と、目が合った。