「ごめん、ユリ……私、ちょっと行かなきゃいけないところがあるんだ」
「え……? ああ、そっか。わかった。今日、だったよね?」
「うん……」
未だに私の身体を離さないユリの体温を遮って、私が鞄の中から取り出したのは一枚の紙。
随分と提出するのが遅くなってしまった、私の進路表。
「ミウは、看護師目指すって決めたんだよね?」
「うん。今回、入院もして……間近で看護師さんたちの仕事を見て、改めて覚悟も決めたよ」
「そっかぁ」
「進学については、先生から奨学金の話とかも聞いてみようかなって。冷静になって考えたら……夢を諦めなくても、叶えるための色々な方法が今はあるんだって、気が付いたから」
真っ直ぐに、ユリの目を見つめながらそう言えば、ユリはとても嬉しそうに笑ってくれた。
入院中、進路についても改めて考える時間を持つことができた私は、インターネットや先生に頼んで貰った資料を見て、奨学金制度のことに今更ながらに気が付いたのだ。
夢を諦めようと思っていた時には、目に入ってこなかった情報。
けれど、前向きに物事を考えた始めた途端、色々な情報が私の目と耳にも入るようになった。
……私は、視野が狭くなってたんだ。狭い世界で、息ができなくなってもがいてた。
遠くで鳴り響く、予鈴の音。
それにハッと我に返った私は、時計を見て目を見開いた。
「あ、ごめん、行かなきゃ!」
「うん、いってらっしゃい!」
早くしないと、ホームルームが始まってしまう。ユリに片手をあげると、私は足早に教室をあとにした。